僕はただのbarのオーナーです






あれから…神月澪と工藤翼が裏の世界に足を踏み入れて12年。

もう12年なのかまだ12年なのかは分かりませんが、今日が光を奪われた日。

翼にいたっては、親を目の前で殺された日。

私は…親に裏切られた日。

あの日。
私たちは地獄の中に放り込まれ、そして助けられた。

たった半日ちょっとの出来事でした。
それでも、私たちの心に深く闇を刻むのには十分だった。

人を信じること、慕うこと。
すべてが怖くなり、それをすることを拒んだあの日。

裏で住むための素質を見抜かれたあの日。

思い出したくもない過去の日々。

裏で生きるための術を学び始めたあの日。
初めて人を殺し、始末したあの日。


全ては12年前のあの日から始まりました。

私たちが私たちとしていられなくなったあの日に黒羽と白羽が生まれた。

あの日を迎えなければきっと今も変わらず、笑って過ごしていたのでしょう。

あの日、壱条さんに救われなければもう一度汐の笑顔を見ることは出来なかったのでしょう。

あの日、あの場で死んでいれば今を苦しむ必要などなかったのでしょう。