「オレの家があそこにあるのは、日々その悪い魂をしずめるためでもあったんだ。でも、オレの魂が抜けた瞬間、しずめるパワーも抜けちゃうからさ。それで、怨霊がその一瞬のスキをねらって、自分と同じ恐ろしい目にあわせようとしたんだ」
「あんなに怖かったのは、悪霊になってさまよわなくちゃならなくなった時の気もちが、私に伝わったからだったんだね……」
「おそらく、ね。」
思い出すだけで寒気がする。
悪霊が元々どんな人なのか、そもそも人間だったのか、何をしでかして悪霊になり果てたのかは、怖くて知りたくない。
私は臆病だから、今までの不思議な体験だって信じたくない。
でも、健斗君は、あの家に住み続けて魂をしずめていたなんて。
実は、すごい人なのかも知れない。