「また会えてうれしいよ、沙也(さや)ちゃん!」
「私はあんまりうれしくないですけど」
じろりとにらんだ先には、ジャラ男こと真崎健斗(まさきけんと)がにこにこしながら座っている。
髪をかきあげてから、私の携帯をカバンから取り出した。
携帯を返してもらいたくて待っているだけで、いやでも目に入る、ジャラ男の姿。
薄いブルーのワイシャツに、黒とエンジのストライプのネクタイ。
紺色のいかにも高級そうなジャケットの襟には、きらりと輝くペン先型の校章がつけられている。
昨日の電話で『隆國院学園高等部』って言っていたけれど、ここって私立の中高一貫で超進学校だったはず。
こんなすごい学校、きっと学費も偏差値も相当高いんだろうな。
なのに、その品位が台無しになっちゃうようなじゃらじゃらアクセサリーはどうなの?
全然、私のタイプじゃない!
一緒に並んでいるのだってやめてほしいのに、こんな男子と一緒にドーナツ屋さんなんて最悪!