「静音」
優しく名前を呼ぶと、ゆっくりと目線をこちらに持ってきた。
俺だって、こんなこと慣れてるわけじゃない。
むしろ、好きな子にここまで出来てる自分にちょっとヤバイなって思うよ。
それくらい止められなくて、日に日に好きが増している。
「静音は、他の女の子たちとちょっと違うよね」
ボートを漕ぐのを再開しながら話しかける。
「…っ、他の子と違って、地味だよね」
「いや、そういうことじゃなくてっ」
静音が自分に自信がないことはなんとなくわかっている。
「控えめで、だけどちゃんと人のこと見てて。優しいんだなってすごくわかるよ」
「そんなこと言ったら…柊くんこそそうだよ。誰にでも優しい。クラスメイトのみんなにもこんな私にも」
いいところがたくさんあるのに。
本人がそれに気付けていないなんて、一体何が原因なんだろうか。
「静音、俺の前でそういうこというの禁止ね」
「えっ?」
俺の勝手な提案に静音が声を出す。