「な、何でしょうか…」


「緒方さん、このプリント終わった?」


今まで顔を見ると緊張していたのに、今日はこの状況で柊くんの顔を見ることができてホッとする。


変わらない優しい表情で、私にプリントをヒラヒラと見せてきた。


「あ、うん。終わったよ」


今日提出の課題。


もちろん終わらせている。


「よかった。この問4なんだけどさ、俺も自信なくて。今こいつに教えているんだけど、この解き方であってる?」


教室のど真ん中で、柊くんに声をかけられて、運動も勉強も完璧な柊くんに勉強のこと聞かれてる?!


おかしいよ…。


私より絶対柊くんの方が勉強できるはずなのに。


周りでは女子たちがコソコソと話しているのが見える。


絶対に目をつけられてる。


絶対におかしい。


頭の中はパニックでパンクしそうだけど、それでも私はプリントに必死に意識を集中させる。