「はい、手を合わせてくださいっ!」
俺の太ももにおかずの乗った弁当箱の蓋を置いてから嬉しそうにそう言った彼女の横顔。
あまり顔を覚えていないのは、視界が涙でぼやけていたからかもしれない。
自分が始めて、ちゃんとひとりの人間として認められた気がして。
俺の容姿について何とも思っていなくて、まっすぐ親切を示してくれた彼女。
名前を聞きあったわけでもいない。
どこの誰なのか知らない彼女と、
『いただきます!!!』
そう元気よく声に出してそう言ったあの日。
それは、
あの頃の声の大きさとは全然違うけど。
『いただきます』
高校生になって偶然聞こえた、
家庭科室の窓の外。
誰も見ていないのに、小さく声に出していたそれと全く同じだったんだ。



