「助けられなくてごめん」
「なんでお前が謝んのさ。つーかちょー昔の話だし、別にどうでもいいし」
なんで泣きそうなんだろう。
人の前では泣かないって決めたのに。
いや、一度だけ柊の前で泣いちゃったんだけど。
それでも、自分が一人で辛かった日を、ちゃんと覚えていて、それを共有できる人がいたことにちょっと嬉しくなって。
私は、慌てて隣の土田から顔を晒す。
ダサい。
子供の頃の、些細な話なのに。
「俺はちゃんと知ってるから。そこは高城よりもずっと知ってる自信があるから。本当はすごく傷つきやすくて誰よりも人のこと考えてて、けど変なところ素直じゃなくなって強がりなのも全部知ってるから」
「……っ」
「俺の前では、全部吐いてよ」
「んだよ、それ」
多分、泣いてるのはもうバレている。
それでも見られたくない。
だけど…。
初めて少しだけ、自分の人生が報われた気がした。
ちゃんと知っててくれて見てくれた人がいたことが、嬉しくて。
「…ありがとう、土田。クッソブスな顔で泣くわ!」
私は、彼の背中をバシンと強く叩いてから、
人生で1番ブサイクな笑顔を向けた。