「こういうところだよ…」


「えっ…」


「みんなに優しい柊くんがやだよ!好きでもない子に、相手が誰でも、こういうこと簡単にできちゃう柊くんが嫌なの!だから…もう、関わらないで!」


私はそう言って、自分の今の一番の力で彼の手を振りほどいて振り返った。



「静音っ!」


顔なんて見れるわけがない。


気付けば、頬は濡れていた。


何度も呼ばれた名前に、一度も振り返らずに、私は走った。



鈴香ちゃんのためだって、半分はそうだった。


けど、今私の口から出たセリフだって、全部が嘘じゃない。


口に出て初めてわかった。


多分私はずっと、知らない間に、柊くんとの特別な関係を期待していたんだ。


柊くんを好きな理由に、みんなに平等に優しいって理由も嘘じゃないはずなのに。


嫉妬する原因にもなっちゃうんだもんなぁ。


柊くんが平等に優しいから、私だって話すチャンスが与えられたものなのに。


わがままだ。