「それより!これ!」
「ん?」
ずっと気になっていたそれを、鈴香ちゃんがホイと私に渡した。
黒い大きな紙袋。
「なに?」
「見てみ。静音に似合うと思うから」
「え?」
鈴香ちゃんに言われるがまま、私は紙袋の中を覗く。
っ?!
これって…。
生成り色の布地に、ブルーの紫陽花柄が咲いている。
「ゆ、浴衣?」
「ピンポーン!」
いや、ピンポーンって…。
「これ…私に?」
「うんっ!私にはそんな上品な色似合わないから」
「でもこれ、鈴香ちゃんのなんじゃ…」
「ううん。これはうちの母親の。おさがりでよければだけど…」
いや、すごく嬉しい。
こんな可愛いもの。私なんかがもらっていいのだろうか。
けど…。



