勇も大いに酔っ払った。
普段は酒を飲まない勇がここまで呑むというのも珍しい。
芹沢の祝いを心から祝福している。
久しぶりに飲む仲間との酒というのは芹沢の酒を取り込む速さを急かした。
本庄宿にて勇が芹沢の宿を不手際で取れなかった時の大篝火事件。
京に残ると新徳寺で清河八郎に向けて立ち上がった時。
八月十八日の政変にて、会津藩兵に槍を向けられ大鉄扇で払い避けていった勇姿。
全てが昨日の事のように思い出される。
昔話に花が咲き、そこには当時を知らない新入隊士の者達も続々と集まってきた。
「いいかお前達!
今や長年の太平で腐り果てた幕府に、もはやこの国を守る力などない!
しかし幕府には会津がついている!
会津ある限り帝も大樹公も安泰だ!
そして何より我等、壬生浪士組がいる!!」
芹沢は立ち上がり、大鉄扇をびしりと構えてそう言った。
「尽忠報国の志のもと!
尊皇攘夷の志のもと、誠の旗に集いし武士(もののふ)達よ!
存分に帝と公方様の為に働こうぞ!」
おうっ!と隊士達の歓声がこだました。
お梅はそんな芹沢の姿を見て、見守るように微笑んだ。
初めて会った時、芹沢の目は寂しさに満ち溢れていた。
(こんなにええお仲間に恵まれてるなんて、芹沢先生幸せそうやわ)
久しぶりに呑む酒というのは、よくまわる。
芹沢と平山は大いに酔っ払い、日頃から酒を呑まない平間は二人の様子を見て、帰路につく事を促した。
宴もたけなわだ。
歳三は幹事である平助と野口を呼んだ。
「若い者達もまだまだ飲み足りないだろう。
別の店を用意してもらいたい」
せめて野口だけは救ってやりたい。
まだ若く、浪士組結成当初から野口は隊務にしっかり励んでいた。
「かしこまりました!
様子を見ながら別の店案内しますね」
平助はそう言うと、野口と共に店の手配を行なっていく。
芹沢は酒が回っているのか、千鳥足となっている。
「ワシ等もお暇させてもらうぞい」
芹沢はそう言い立ち上がった。
それに続いて平山と平間、お梅も芹沢のお供につく。
八木邸には平山と平間の馴染みの芸妓である輪違屋の糸里と、桔梗屋の吉栄が待機している。
