鬼の生き様


 しかし清河の動きはすでに幕府に発覚していた。
幕府を欺き浪士組をあのようなペテンで自分のものとしようとした前科が清河にはある。

幕府にとって清河は危険人物だ。
開国を目指す幕府としては、ここで外国と騒ぎを起こされては堪らない。
生麦事件の悲劇が再び起こってしまうかもしれないと畏怖した。

なんとしても清河の暴発を阻止しなくてはならない。


 老中の板倉勝静(いたくはかつきよ)は、信用できる六人の侍を自邸に招いた。

「清河八郎を斬れ」

刺客は佐々木只三郎、速水又四郎(はやみまたしろう)、高久安二郎(たかひさやすじろう)、窪田千太郎(くぼたせんたろう)、中山周助(なかやましゅうさく)と家永某。
いずれも腕の立つ剣客揃いだ。


 攘夷決行の二日前、横浜から帰って以来清河は風邪をひいていた。

この日清河は麻生一橋にある出羽上之山藩邸内の長屋に住む同志の金子与三郎の家を訪ねて行く予定である。

朝風呂に入り、清河の体調は優れずに真っ青な顔色で出かけて行った。

 この日の清河のいでだちはいつも通りの黒羽二重の紋付羽織を着て、鼠縦縞(ねずみたてしま)の仙台平の袴をはき、髪は総髪、檜で編んだ陣笠をかぶっていた。
途中、浪士取締役の高橋泥舟(たかはし でいしゅう)のもとに寄って雑談をしたのだが、忙しい高橋泥舟はすぐに登城しなければならないといって出かけていくと言うのだが、それを清河は止めた。