「なにしてるの、あれ」


沙希が怯えたように言う。


「ちょっと待ってて」


俺はそう言うと廊下へ出た。


「立花、もうやめろよ」


「なんで? もうすぐ死ぬ人間の動画だってきっと人気が出るよ?」


「そんなことより逃げないと俺たちまで殺されるかもしれないだろ」


「そんなことない。もうこんなに死んでるんだよ? きっともう大丈夫」


立花はスマホの画面にくぎ付けになったまま返事をする。


時々、まだ生きている生徒を蹴り上げてうめき声を上げさせたりしながら、立花は撮影を続ける。


「ねぇ、萩野君も撮影しなよ。コンテストの賞金は3億円を超えてるよ?」


3億。


その数字に一瞬目がくらみそうになる。


が、俺はかぶりを振って教室へと戻って行った。


立花も気が住むまで撮影すれば逃げるだろう。