エイトと真央は一番後ろの席に並んで座り、俺は沙希と一緒に中央あたりに座った。


沙希はいつもと違ってグロスを付けているようで、唇がうっすらと輝いて見えた。


「今日は化粧してるんだな」


そう聞くと、沙希は頬を赤らめて頷いた。


赤いグロスは白い肌によく似合っている。


「気分を変えたくて」


「へぇ……」


好きな奴でもできた?


という言葉を飲みこんだ。


そんな事を言うと嫌味な奴だと思われるかもしれない。


「1年生の宿泊合宿の時に毎年何組かのカップルができるって、知ってる?」


そう聞かれて、俺は左右に首を振った。


「なにそれ、噂?」


「噂っていうか、言い伝えっていうか、なんだろうね?」


自分で話を振っておいて首を傾げている沙希。