俺はその片目を残したまま、犬の体を仰向けにさせた。


犬の鼓動は辛うじて動いているけれど、いつ止まってもおかしくない。


そんな腹部に指を這わせた。


動物の暖かさを感じる。


皮膚は柔らかく、弾力がある。


これを引き裂いたらどうなるのだろうと考えると、ゾクゾクした。


知らない間に口角が上がり、笑っていたので自分で驚いた。


自分の中から解き放たれた悪魔はどこまでも残酷で、犬を解体することに躊躇もなかった。


カッターナイフは犬の腹部に突き立てられ、それはゆっくりと犬の皮膚を引き裂いていく。


犬が小さく痙攣し始めた。


臓器を押し込めていた袋が裂かれた事で腸がとび出して来た。


赤いそれを指先でつまんで引きずりだすと、犬が足をばたつかせて最後の抵抗を見せた。


腸から手を離すと、犬も動きを止めた。


もう目は俺を見ていない。


灰色に濁った眼には命の力を感じることはできなかった。