保健室は俺の安らぎの場だ。


その場まで《マッドマン・ムービー》を持ち込むのはやめよう。


その時保健室のドアが開いて立花が顔を覗かせた。


「萩野君、大丈夫?」


「ああ。もう手当ても終わったんだ」


「そう。よかった」


立花はホッとため息を吐き出して笑ってみせた。


この立花があの動画を配信しただなんて、やっぱり今でも信じられない気持ちのままだ。


でも、今日の出来事でわかったこともある。


人は金を見るといくらでも愚かになる事が出来ると言う事だ。


賞金5000万に目がくらみ、ユリたちは人生を棒に振ったのだ。


「途中まで一緒に帰るように先生に言われてるの」


立花の言葉に俺は頷き、立ち上がった。


「池田先生、ありがとうございました」


「いいえ。気を付けて帰ってね」