「なぁ、八雲。いつからこんな感じになってた?」


そう聞く寺川くんは何だか気落ちしてしゅんとしている。

どうやら今ので私が今日になって置かれてた状況が把握出来たみたい。


うん、イケメンはどんな表情でもイケメンとか。
ずるいわ。


しかし、この質問は答えづらいな。
どうしようかなと悩んでいると


「今日の中休みからこんな感じよ?そっちは家庭科で移動教室だったから気付かなかったようね。」


ニッコリ言うはるちゃんの笑顔の奥に
『おい、お前何やっとんじゃ!』ってお怒りが見える。

「八雲、ごめん!俺がちゃんと周りに言ってなかったせいでこんな事になって。俺が片想いでアタック中だから邪魔すんなって言っとくから。」


いやいや、今さっきので十分次の話題として尾ヒレに背びれに胸びれまで付けて噂が巡るはずだ。


女子高生の口には戸が立つわけがないので、放課後までに寺川くんが私にアピール中な事は伝わり、余計な事すると王子の逆鱗に触れる事が伝わるだろう。


まぁ、それでも強気な女子は攻めてくるかもしれないが。

そこはまぁ、はるちゃんと一緒に居ると私が口を開く前に決着がついちゃいそうだし。



「お誘いは嬉しいけれど、お昼ははるちゃんと食べる事にしてるから。帰りは一緒に帰るから、ね?」


そう言うと少し苦く嫌そうな顔をした。
私が寺川くんとの距離を稼ごうとしてるのはどうやらバレバレのようだ。