「そんな、大したことないよ。私レベルの人なんて沢山いるもの。」



そう言うと


「いやいや、音楽室のピアノの主は誰だって話題になってるの知らないの?」
そう言うのは奏くん。

「何それ?知らないよ?」
思わず小首傾げてしまうと


「JーPOPからクラシックまで色々弾きこなすピアノの主はこの選択授業のうちの誰だってって話題になってたんだが誰も教えてくれなかったんだよ。」

そう奏くんが言う。

「はるちゃん教えなかったの?」

そう聞くと


「だってバレたら芽衣ちゃんは弾かなくなるじゃない。」


はるちゃん、よく分かってらっしゃる。

「バラして私らの楽しみ減らすなんて嫌だしね!」
とは、千鶴ちゃん。

「そうそう、折角最新JーPOPのピアノバージョン聴ける機会無くすとか嫌だし!」
とは茜ちゃん。


そんな感じでこの時間に私がピアノを弾く事は内緒にされてたらしい。


「なるほどね。で、今日はそう言いつつもはるちゃんはそろそろ絆され基面白そうで二人を呼んだね?」

チラッと見ながらいうと

「バレたか。」
と、チラッと舌出して笑うはるちゃんに

「まぁ、この二人なら良いよ。ピアノの主について黙っててくれそうだし。」

そう言うと

「うん、こんな聴ける機会に恵まれたんだから他言しないよ!」
と奏くんが言い
「俺も言わないよ。」
そう爽やか笑顔で答えた寺川くん。


「それで、二人は何が聞きたいの?」


そう聞くと、二人は目が点になった。


「うーん、ピアノ曲に疎いから特にない。」
そう言う奏くん。

「じゃあ、シューマンのトロイメライ弾ける?」
そう聞いてきた寺川くんに

「弾けるよ。じゃあ、今日の最後はトロイメライにしよう。」

そう、言うと。

「もうそんな時間になってたのね。」
と言うみんなが静かになったところで弾き始めた。