黒のブラウスにネクタイ。

銀ライン入りの白のジャケット、スカート。



慣れない真新しい制服に袖を通し、ここ霞桜の正門を潜って来たは良いものの…。



「フフッ」

「…」



事前に言われていた通り理事長室に来てみると、

理事長の幸には噴き出され、担任の琳には凝視された。



「…あぁ、蘭。いらっしゃい」



幸と琳は、今は忙しくしている兄2人どちら共と親しく、

同時に昔私氷咲蘭の遊び相手にされていたから親しい。



黒髪に黒目の糸目、端正な唇が弧を描く美丈夫の美里幸。



「あぁ」



「結構つくの早かったね。びっくりしたよ」



「びっくり…ね」



幸がびっくりするとなると、挙げる方が大変だろう。



多分今回だってしてない。

顔に出にくい…というか誤魔化すのが上手いのもあるが。



「うん。で、説明する時間ならいくらでもあるにはあるんだけど、一応始業時間だからね」



「ハッ!」

ハッとした様子で反応した、

ギリギリ括れる長さの茶髪を後ろで括る、茶目の黙っていれば美形。



猫背気味な姿勢になってきている鈴屋琳。



ースクッ

「そうだった!」



立ち上がってすぐ、室内の時計を見る琳。



「それで例の件だけど、ハイこれ」



例の件。

それは私が入学するにあたって、提案されたいくつかの条件。



その一つ。



「…あぁ」



差し出されたのは白いハンカチ。



幸の手のひらに乗せたまま開けると、そこには1つの精巧な小物。



虹色の百合を模したネクタイピン。

よく見かけるのはバラだが、これは百合が虹色になっているらしい。



「付けるのは後でも良いから」



「あぁ」



敢えて虹百合の花が見えないように、ネクタイにネクタイピンを付けた。



それを見ていた幸は「へぇ」とギリギリ聞こえる声で呟いて。



「じゃ、行ってらっしゃい」



ひらひらと手を振っているのを見たと同時。



「行くっすよー」



ダルそうな声でだが、急いでいるのか琳に腕を掴まれそのまま走り出される。



そうして私は、道順も何も覚える暇なく教室まで連れて行かれた。