私は、ただなんとなく、島での時間を過ごした後、日本へ向かう飛行機に乗っていた。

 何故か、隣りの席のカップルは、島で結婚式を挙げていた新郎新婦だ。

 日本へ新婚旅行にでも行くのだろう。


 長い飛行時間の中、隣のカップルはなにやら言い合いを始めた。

 英語だが、二人の会話から、揉めているのが分かる。

 でも、言いたい事を言っているのに、直ぐに、笑い声に変わった。


 なんだか、安心して喧嘩している二人を、ふと見てしまった。


 彼女の方が、私に気付きニコリと笑う。

「新婚旅行?」

 私が尋ねると……


「ええ。分かりますか?」

 彼女は、綺麗なブルーの目を嬉しそうに向けた。


「島で、結婚式を挙げていたでしょ? とても綺麗だったわ」


「ええ―。嬉しい」


「仲がいいのね?」

 私は二人の顔を交互に見た。


「いっぱい喧嘩するけど、すぐに笑っちゃうし。彼とだと、安心して喧嘩出来るんです。」


「安心して喧嘩?」

 思わず問い返してまった私の胸に、何か大切な事を言われた気がした。


「不安な気持ちでいたら、結婚なんかしないでしょ?」

 彼女は可愛らしくクビを傾げた。


「そうよね……」

「お姉さんなんかあった?」


「えっ?」

 胸の奥から、悲しみが込み上げ、弱々しい笑みを見せてしまった。