でもなんだかその声は元気がなくて。
榎本さんの横顔も、寂しげに見えた。



「……………」


なんだか気まずくて、無言になってしまう。

聞きたいこと、話したいことはあるはずなのに。



「…そういえば、ちゃんと自己紹介してなかったよな」


その声に驚いて榎本さんの方を見上げる。



「あっ………はい。」



「俺、榎本拓海。よろしくな」


榎本 拓海、さん。


「あっ、だから店長『拓ちゃん』って呼んでるんですね」


「そうそう。あの居酒屋、家から近くて学生時代から通ってるから。
前に、七瀬さんがバイト入ってくれたって、店長かなり喜んでた」


……そういえば、榎本さんはどうして私の名前を知ってるんだろう。


「榎本さんは、私の名前、店長から聞いたんですか?」


「あ、うん。そうだよ。ごめん、知らないおっさんが名前知ってたら怖いよな。」


私はその言葉にブンブンと首をふる。


「ははは。そんなに否定しなくても。

5月くらいから新しいバイトの子が来たなって思って聞いたら、店長が『七瀬沙夜華ちゃんだよ』って。」



うわ。今榎本さんが下の名前も呼んでくれた…。


なんか、心臓が、うるさいよ。