篠突ク雨ニ謳フ

「うっせぇ耳元で叫ぶんじゃねぇ!!!!!…ったく千代、よく聞けよ」



兄上がまつげを一本、引っこ抜いた。



(これは…っ)



実は兄上は真剣になるとまつげを引っこ抜く癖がある。



これを見たら黙って聞かないわけにはいかない。



ということで、私は(しぶしぶ)正座をして話を聞くことにした。



「俺が病気になった今、ここの家に剣を持つ奴がいない。そんなこと、この家で絶対あっちゃいけねぇことだ。それはお前もよく分かってると思う。」



たしかに私ら_「御劔家」は剣道の家元、家紋が誕生してから一度も剣を持たなかった時代はないって聞いてる。



そんなこと、絶対あっちゃいけないってことも知ってる。



「だからだ。お前の剣の腕は本物だ、俺が保証する。母上が亡くなり、父上ももう剣が持てるほど若くない。頼む、隊士組に入ってくれ。今、千代にしかできないことなんだ」



兄上の目は、真剣そのものだった。



「お待ちください!お言葉ですが、いくら伝統とはいえ千代様は女子でございます!むさ苦しい男だけの隊士組など、私は反対でございます!」



雅の意見はもっともだった。



私だってむさ苦しいところへは行きたくない。できるなら今までみたいに竹刀振り回す生活がしたい。


けど、そうしたらこの家はどうなる?



平安時代から続いてきた「御劔家」の伝統はどうなる?


「…兄上」



なら、私の答えは一つしかない。



「…わかりました。
私が、行きます」



育ってきたこの家を守れるなら、
なんだってする。



「私が、御劔家を継ぎます」