どれほど時間が経過しただろうか。
子育てなどしたこともない俺には、オムツが汚れて不快だから……という原因にようやく辿り着いた。

「……で、これボタンどこだよ」

一難去ってまた一難、赤ちゃんの着ている服のボタンの外し方が分からない。
胸になし、背中にもない。
上や下や、最早工場の検査のように調べてようやく股の間にボタンがあることを発見した。
そのボタンを開けると独特の匂いが鼻孔を刺激してゆく。
臭いというより、ようやく泣いている原因が分かって安心……という気持ちのほうが大きい。

「はいはい、すぐに取り替えて……」

この子の母親が購入している物の中身は殆ど赤ちゃんの物であり、その中にオムツもあったのだが今度はそのオムツの履かせ方が分からない……
生命の塊のような泣き声は相変わらず続いており、どこにそんな泣く力があるのか逆に不思議になる……って感心してる場合じゃない!
今度はオムツの履かせ方の動画を検索しなきゃ!
いや、その前に【女の子】の股の拭き方とかあるのかよ!

「こ、これでいいのか?」

全て終えた頃には両腕の感覚がなくなっていた。
変なところに力を入れすぎたのかもしれない。
赤ちゃんは落ち着いたのか、寝てくれたが……
安心して油断してしまったのか、今度はこっちの涙が流れてきた。

物のように渡された女の子……
捨てられた、と考えるのが打倒なところだろう。
母親にも母親の理由があるのかもしれない。
でも、見ず知らずの俺に向けてこの子は精一杯泣き叫び、生きようとしている。
オムツを交換しただけで何を……と思うかもしれないけど、この子は生命力に溢れている。
この子の眼に俺はちゃんと写っているのだろうか……
怖いと思わないのだろうか、寂しいとも……