孤独な死神

転校生を連れてクラスへ移動する。転校生は周りをキョロキョロ見回しながら後を着いてくる
どうやらヤンキー校なのに校舎が綺麗なことを不思議がっているらしい。年相応の行動を見て少しホッとした

「少し待っててくれ。呼んだら入ってこい」

「はい」

コクリと頷く転校生
くそっ、礼儀正しいなコノヤロウ。視界がちょっとぼやけた
教室に入るとざわめいた。HRをすることはほとんどないからな。それにしてもうるせぇ
ギロッと睨みつけるとピタッと静まり返った。転校生見てからこいつら見るとすげぇアホに見えるわ……いや、アホなんだが

「良い知らせと悪い知らせ、どっちが聞きたい?」

「良い知らせ!」

「良い知らせは転校生が今廊下で待っている」

『うぉぉぉぉ!!!』『きゃぁぁぁ!!』

「うるせぇっ!」

怒鳴るとまた静まり返った。学ばない。やっぱアホだ

「秋ちゃん先生悪い知らせはー?」

「悪い知らせは……転校生はどのグループにも属していないということだ」

全員の頭に?が浮かんだ。まぁこれだけじゃ納得しねぇか

「つまり転校生を族に勧誘するのは早い者勝ちだって事だ」

『!!』

目をキラキラ輝かせてどう勧誘するか作戦を立て始める。そこで女子が質問した

「秋ちゃん先生、それのどこが悪い知らせなの?」

ほかの奴らもコクコクと頷く

「それは…………転校生だが。おそらくどこの族にも属さないだろうということだ」

「つまり……?」

「転校生の勧誘は全て失敗するってこと?」

「まさか、風雅がいるのにそんなわけ……」

「そうだ」

言葉を遮ってそう断言するとクラス内の空気が凍った
有り得ないというような顔をした

「秋ちゃん先生、それ本気?」

「本気だ。因みに校長も同じ意見だ」

ますます空気が凍った

「ねぇ秋ちゃん先生、転校生、どんなやつなの?」

恐る恐ると聞いてくる

「一言で言うと……天才、だ」

ずば抜けて頭が良い。気配だけで分かったがかなり強い。身長は小さいがパワーはある。細いが筋肉もしっかりついているだろう。
それに。情報が出ない。如月涼という人物は確かに存在している。なのに存在していない
透明なのだ

「まぁ今は信じなくてもいい。多分近いうちにトラブルが起こるだろう
だから先代風雅として忠告しておく

馬鹿な真似は絶対すんな。あれは見た目ほど可愛い物じゃない。言うなら、子猫のフリした虎だ
肝に命じとけって言っても理解しねぇだろうから、死なねぇ程度に喧嘩売ってみると良い。んで格を思い知れ

さ、そろそろ転校生を呼ぶ。普通にしとけよ」

そこで声量を普通に戻した

「えー、転校生を紹介する。入ってこい」

転校生を呼んだ。クラス内の雰囲気が硬い。どんなやつが出てくるのかを観察しているのだろう。

そして転校生が入ると全員が肩の力を抜いた

蜂蜜色の髪。黒い猫耳付きパーカー。ヘッドフォン。赤色のダイヤ型ピアス。ゴツい指輪。十字架のネックレス。
程よく着崩しているモデルのようなイケメン。身体の線は細い。身長も168くらいだろう。小さめだ

そして全員が思っただろう
どこが虎なんだ。と

まあ、そうなるよな。溜め息をつく。忠告はした。どうするかはこいつら次第だ。

「自己紹介を頼む」

あわよくば自己紹介で少し情報を引き出すことが出来れば……さすがに無理だろな

「如月涼(kisaragi ryou)です」

ぺこりと頭を下げた

……………………………え、それだけ????

「…………他は?」

「……名前言いましたけど?」

嘘だろこいつ。名前言って終わりとか。まじでなんの情報も渡す気無いじゃねぇか。溜め息をつく。

「………………まぁいいだろう。一番後ろの窓際の席だ」

「了解です」

転校生が窓際の席に移動しようとしていると馬鹿が足を出した
その瞬間如月が止まる。その瞳が見えた
人を人と見ていない、無機質な瞳

ぞくりと背筋が凍った。あいつ、足折るつもりだ

しかしその心配は杞憂だった。足を出した馬鹿が反応しない転校生に舌打ちして引っ込めたのだ。良かった。初日から病院送りとか有りそうだったからまじ焦った

ハラハラしながら転校生を見守っていたがその後は何事もなく平和だった。







LHR。教室に訪れると転校生、如月はヘッドフォンを付けて目をつぶっている。寝ているらしい。
周りを女子が取り囲んで起こそうか悩んでいるが俺が入ってきた事に気がつくと残念そうに席に戻っていった
如月の席は風雅に取り囲まれている。問題が起きないはずがない。
この席にしたのは校長だ。辰樹は今の風雅のプライドを折る人物を探していた。
今の風雅は駄目だ。だからといって先代がしゃしゃり出ても意味がない。誰か風雅よりも圧倒的に強い誰かにコテンパンに負かされる事を望んでいる。そしてそれは俺も同じ。
おそらく風雅がやってきたら問題は起こるだろう。火に油を注ぐよりも簡単に、燃え上がり如月は風雅を負かすだろう

如月は何を考えているのか分からない。だが多分。何となくだが、この状況を楽しんでいるのだろう。








如月が副総長を倒した。その事実は瞬く間に広まった
流希は辰樹の思惑通り如月を気に入り勧誘しようと躍起になっている。

だが如月はこれまた辰樹の予想通りどこの族にも属さなかった。