風の歌

「本気なの?陸!!」




深夜…孤児院――海里が暮らしていた家で、窓から出ようとする陸の腕を風歌が引き止めた。


「本気さ。言ったろ?冗談何かじゃないって」

「でもそんなの危険だわ!」

「危険なのはわかってる。‥でも、あれから寝る間も惜しんで調べて、やっと手にした情報なんだ」


キッと風歌を見る。


「もしかしたらそこに海里はいないかもしれない。間違った情報かもしれない…」


「だけど、それしかないんだ!俺は海里を連れ戻す!!」

「…」


手を離す風歌。


「でも、陸が突然いなくなったら家族や皆が悲しむわ…」

「……もう十分悲しんでる。俺がいなくなったって大した変わらないさ」

「そんなことない!!」

「!」


「陸の馬鹿ぁ‥陸までいなくなったら…私……私………」


今にも泣き出しそうな顔になる。


「だっ、大丈夫だって!必ず海里を連れて帰って来るから!風歌は何も心配することないんだ!」


慌てる陸。


「嫌!1人で行かせるもんですか!!」


再び陸の腕を掴んだ。


「風歌…」


弱ったな…


困り顔の陸。


「どうしても行くって言うなら、私も行くから!!」


「え!?」


驚く。


「本気だからね!言ったでしょ?「1人で行かせるもんですか」って!!」


「駄目だ!」


首を横に振る。


「何で駄目なの!?私だって海里の友達よ!連れ戻したいって思うのは当然でしょ!?」

「…風歌は戦えないだろ?きっと、目的地に着いたら戦うこともあるはずた。悪いけど……足手まといだ」

「…足手まとい?」


頷く陸。


「私、足手まとい何かにはならないわ」

「でもそれは‥」

「戦えればいいんでしょ?」


目付きがいつもの穏やかな風歌と違う。