そのまま、手を引っ込めてさっき歩いてきた道を引き返す。



「ペンキなんて、取りに行かなきゃよかった……」



本当は、まだそれなりに入ってるペンキ。
永人といるのが気まずくてペンキを足しにきたのに。



「足したって嘘つこう」



たぶん、このくらいあれば看板を塗るのには足りるはずだ。
だから、永人には足してきたと言うしかない。



「大丈夫……」



ドキドキしながら、永人のいる教室のドアに手をかける。



「永人さー、草野さんと別れたんでしょ?」



またもや手をかけたとこで中から聞こえる自分の話。



「それがどうかした?」



いま、一緒にいるのが女の子だからだろうか。
不機嫌そうな永人の声が聞こえる。



「別れたなら、あたしと付き合ってよ?」



想像していた言葉だった。
永人はモテる。
永人の彼女になりたい人なんて、この子だけじゃなく他にもたくさんいる。



「お前と付き合うとかありえねぇから」



永人がため息をつきながらいう言葉に、内心喜んでいる自分がいて、自分のしたいことがわからなくなってくる。