「ごめんな、日奈子。俺、千花と話してくるから。もし俺のことダメになってたりしたら助けて……な?」


「うん。でも、ダメにはなってないはずだから」


「わかった」


日奈子に言われると自信が持てる。
千花のことを誰よりもわかってる存在だからだろうか。
悔しいけど、日奈子には勝てないと思う。



「じゃあ行ってこい!」



俺の背中をボンッと思い切り叩く日奈子は、泣き笑いで。
笑うか泣くかどっちかにしろって感じだけど、でもいい顔をしてた。



「おう!」



日奈子の後押しに、俺も笑顔で答えて教室を飛び出す。



「千花……」



名前を呟けば浮かんでくる、千花の顔。
入学してから、いままでの俺じゃあ考えられないほど千花の近くにいれた。

でも、そうすると欲が出てきてしまうようで。
気持ちが溢れ出てしまうようで。

キスもそう。
抑えきれない気持ちの高ぶりがあるから。

ただ、思ってるだけの頃とは違う。
ただ、見てるだけの頃とは違う。

近づけば、もっと近くにいきたくなる。