「千花ー?」



中庭でボーッとしてると、中庭のドアが開いて日奈子の声がした。



「……日奈子」


「永人が落ち込んでたけど、どうしたの?」


「どうしたらいいかわからなくて……」


「ん?」



日奈子がベンチのあたしの隣に腰をかける。



「いや……」



永人のことが好きだろう、日奈子にこんなことを言うのはダメなんだと思う。
でも、誰かに話したくて仕方なかった。
誰かに話さないと、あたしが潰れてしまいそうで。



「どうしたの?永人がなにかしたかなって言ってたよ?」



永人は、寝ぼけてて覚えてないのかもしれない。
でも、あたしにとってはまぎれもないファーストキスで。
それを相手が覚えてないなんて、悲しすぎる。



「……された」


「ん?よく聞こえなかった。なに?」


「キス……された」



日奈子の反応が怖くて、ぎゅっと自分の手を握りしめる。



「キス……?」



やっぱり、日奈子の声は震えていて。
やっぱり、永人のことが好きなんだって辛くなる。