「おはよー、千花!日奈子!」



教室に入ったあたしたちを先に来ていた明日汰が出迎える。



「おはよ」


「おはよー」



ほぼ同時くらいにあたしと日奈子が明日汰に応える。



「なんか、千花機嫌悪い?」



席に座ったあたしの向かいにしゃがんで顔を覗き込んでくる。



「悪くないよ」



嘘。
本当はすごく機嫌が悪い。

でも、こんなことで機嫌が悪くなる自分が嫌だ。
こんなの誰にも知られたくない。

だって、あたしが永人のこと好きって言ってるみたいじゃない。
永人だけは好きにならない。
そう決めてるんだから。

親友が想いを寄せてる人を好きになんてならない。
好きになんてなれない。
なりたくないんだ。



「永人が風邪を引いても休まないで学校に来たい理由わかるよね?」



日奈子が明日汰の背中をツンツンとつつく。



「そりゃあ……ねぇ?」



明日汰もわかってるようであたしをチラっと見る。