「千花は風邪引かないんだ?」


「うん、あたしが引けばよかったよね」



勝手に散歩に行って迷って。
探しにきてくれた永人が風邪を引いて。

あたしが引きたかったくらいだ。



「永人は自分が風邪引いてよかったって思ってるんじゃない?」


「……うん」



永人はきっとそういう人だ。

でも、それを日奈子にあたしからいうのは違う気がして。
でも、日奈子から言われるのもやっぱり心苦しいなと思う。



「あたしも風邪引いたのが千花じゃなくてよかったって思ってるよ」



なんて笑う日奈子に温かい気持ちが溢れてくる。



「それ、永人が聞いたら怒るよ」


「はは、そうかもね」



すこし切なそうな顔になる日奈子に、やっぱり日奈子と永人の話はするものじゃないなと思う。



「永人、大丈夫かな?」



なんでも出来てしまう永人だから、一人でも大丈夫なんだろうけど。
でも、やっぱり体調が悪い時は心細いと思うし。



「心配?」


「う、ん……やっぱり、あたしのせいでもあるし」



あたしが迷ったりしなければ、永人が風邪を引くこともなかっただろうし。