「ちょっと、千花何言ってるの?」


「ご、ごめんなさい!行こう、日奈子!」



彼から逃げるように日奈子の腕を引っ張って、玄関に入る。



「ちょっと千花どうしたの?」


「た、ただあの人にあたしの拳が偶然当たっただけで……友達になろうとか良く見てもらおうとかそんなんじゃなくて……っ」


「千花!?」



目の前にいるのは、日奈子で。
小学生の頃の友達とは違うと分かっているのに。

あの頃みたいに嫌われたくない……。
それしか頭になくて。



「千花!落ち着いて!」



日奈子に両頬をペチンと叩かれてハッと我に返る。



「……っ」


「またフラッシュバックしてた?」


「……うん」



少しでも男の子と関わろうとするとこれだ。
このままでなんかいられないのに。



「千花、これだけは覚えといて」


「……ん?」


「たとえば、あたしが好きになった人が千花に告白したとしてもあたしは千花から離れない。嫌いになんかならないから」