「はやっ!まだバス動き出してもいないじゃん」


「食いたくなったの。朝飯食い損ねたんだよ」


「もーしょうがないな」



膝の上に置いたリュックの中をどれにしようかと、吟味する。



「そんなに選ぶほど持ってくんのマジうけるんだけど」


「笑うならあげませんけど」


「ごめんて!はやくくれよ」



クスクス笑う永人にぷくーっと頬を膨らませてみれば、慌てたように謝ってくる。

決して、あたしに触れることはしない永人。
その気遣いにとても救われてる。

いくら、普通に話せるようになったとはい永人でも触れるのはまだ怖いから。



「ほらあげる」



お腹が空いたという永人には、すこしお腹にたまったほうがいいだろうとリュックの中からキャベツ太郎の袋を取り出して手に乗せてあげた。



「お!これ俺、好きだわ」



子供のような笑顔で袋を開けて食べ出す永人は、なんだか可愛い。



「日奈子と明日汰にもあげる」



後ろの席のふたりにもキャベツ太郎の袋を渡す。