「もしどこかで誰かに見られたら……困るの千花だろ」


「……永人」



あたしの心配をしてくれていたことにあたしの胸は高鳴る。

こんなことで喜んじゃうなんて安いなと自分でも思う。
それでも嬉しい。



「千花、これ」



小さな袋をあたしに差し出す。



「え?」


「ホワイトデー」


「え、だって……あたし「ごめん、バレンタイン」



あたしの言葉を遮って、あたしに頭を下げる。



「え?」


「あれ、作ってくれてたんだな。俺に」


「え?あ、うん……」



そんなのはあの時点で知ってると思ってた。
でも、どうやら違うようだ。



「俺、あいつに渡してんのみてさ……。すげームカついて」


「うん」


「バレンタインちゃっかり覚えてんじゃねーのかよって」


「それは……ごめん」



あたしが怖くなって嘘をついたことがすべてのはじまりだ。
あたしが一番悪いんだ。