でも、現実は言いたいことなんて言えるわけなくて。
ただ、自分が傷つくのが怖いだけ。



「千花」



学校の門を出ると、先に帰ったはずの永人が門に寄りかかっていた。



「あれ、永人……」


「帰ろう」



あたしの隣に並んで歩き出す。



「用事?」


「これが用事」


「へ?」



永人の言葉の意図がわからなくて、首を傾げる。



「あのさ、なんで昨日あいつといたの?」


「あいつって……瑠衣くん?」


「そう、あいつ」



名前で呼ぶつもりはないらしく、あくまでもあいつと言い張る。



「たまたま会ったの。歩いてたら」


「ふーん……で、そのピアスもらった?」



あたしの耳元に永人の手が触れる。



──ドキンッ



永人の手はひんやりしてて。
それがまた胸の鼓動を早くする。



「もら……ったよ」



ドキドキしすぎてうまく回らない口をなんとか回らせる。