欲望のために中学の頃は、そんな女を抱いたこともあった。
でも、ほかの女を抱いても何も満たされなかった。

そんなことをするたびに思い出すのは、いつも千花の笑顔だった。



「やっぱりきたか」



ポケットで震えるスマホを手にとって、はぁっとため息をつく。


表示された名前は〝日奈子〟
絶対に今日電話がくると思っていた。



「もしもし」



無視しても、電源を切ってもしつこく電話をかけてきそうな気がしたので、仕方なくディスプレイに触れて電話に出る。



『永人!?』



日奈子のデカい声が耳に響く。



「俺以外なわけねーだろ」



どんな内容の電話か、なんてわかってる。
でも、この感情をいまどうやって人に説明したらいいかなんてわからない。



『千花に聞いたんだけどどうゆうこと!?あんた千花のこと大好きでしょ!』


「ちょ……そこに千花いねぇよな?」



振ったくせに、俺が千花のことを好きだとかバレては話にならない。