「……千花」



琉衣とかいう教師からなにやら紙をもらって、嬉しそうにしている千花に後ろから声をかける。



「あ、永人……」



俺に気づくと、チラっと琉衣の顔を見る。



「おっと、彼氏のお出ましだね。じゃあ、またね」



俺の顔をみて、ニコっと微笑んだかと思うと千花の頭に一瞬手を置いてそのまま俺たちに背を向けた。



「だれ、あいつ……」


「ここの学校の先生」


「そんなのわかってる……」



なんだよ。
俺だけじゃねぇのかよ。

あの教師は、俺たちのこと受け持ってるわけでもないから学校で関わったこともないはずなのに。

……なんで、もう千花が心を開いてるわけ？


〝彼氏のお出ましだね〟
だなんて、いまはもう嘘の恋人でもないのに。

学校で噂になっていたことをあいつも知ってるのだろう。
別れたとい噂と広まってるけど、3年の先輩たちはあまり知らないようだった。

なんだか、あいつの大人な感じの言い方がすべてにおいて負けてるような気がして悔しかった。