失恋覚悟のマイヒーロー

「なにもないならさ、俺と出かけない?」


「いや、出かけないです」



こんな馴れ馴れしく触って来る人は嫌いだ。



「いいじゃん?親睦はかろうよ?」



馴れ馴れしく触ってくる手に、気持ち悪ささえ感じる。



「期間限定の場所なので必要ないです」


「つれないなぁー。俺、君のことひと目見て気に入ったんだよねぇ」


「それはどうも……」



はやくここから去りたいのに、この人がそうはさせてくれない。



「ね?だからいいでしょ?」


「いや、行きません」



なにが、いいのか。
あたしはいやだとずっと言っている。



「おい、なにしてんだよ」



頭上から聞こえてきた声。



「……更科くん」



彼の顔をみた途端、涙があふれてくる。



「こいつになにした?」



キッと睨みつける更科くん。



「べつに一緒に今日遊ぼうって誘ってただけだよ」


「こいつは今日俺といるかは他当たれよ」



あたしの手を握って歩き出す。



「なんだよ、それならはやく言えよな」



そんな声を背に歩くあたし達。