失恋覚悟のマイヒーロー

「ねぇねぇ、聞いたー？東野さん結婚するらしいよ！」



斜めまえに座っている女の子ふたりの会話に、更科くんの食べる手が止まる。



「さ、らしなくん……大丈夫？」



なんて、声をかけたらいいかなんてわからなくて。
とりあえずそう声をかけた。



「紫に彼氏がいるのは知ってるから」


「……そうなんだ」


「結婚しそうなのも知ってる」


「……そ、か」



悲しい顔してるくせに。
バレバレなんだからね。



「知ってるけど、いざ聞くときついのな」



そう呟くと、立ち上がって食器を下げに行った。

あたしは彼になにができるのだろうか。
こんなあたしが彼のことを好きという気持ちなんて多分邪魔でしかない。
なんの役にも立たない。



「あたしも食器下げよ」



残りを食べる気にはなれず、立ち上がる。



「ねぇ、今日なにするの？」



食器をかたづけて、部屋まで行こうと歩き出したとき、肩をぽんっと叩かれた。



「……え？」



見てみれば、入校のときに見かけた気はしたけど話したことの無い男の人だった。