「どういう……?」


「わかんねぇの?」


「わかんないよ!」



人の心の中なんてわからない。
だってあたしは、更科くんじゃないから。



「あの日」



ポツリポツリと更科くんが話し出す。



「お前が帰った日」


「うん」


「結局、紫にはなにも言わなかったんだよ、なんでかわかる?」



そう聞いてくる更科くんにふるふると首を横に振って答える。



「お前だよ」


「あたし……?」


「気づいたらお前のことしか考えてなかった」


「え?」



あたしがいなくなったあと、更科くんはあたしなんて思い出すこともないんだろうなって思ってた。



「気づいたら紫じゃなくてお前のことすきになってたんだよ」


「……うそ」




あまりにも信じられない出来事で、びっくりして、でも嬉しくて。
涙が出てきそうで、顔を手で覆う。



「嘘じゃねぇよ。気づくの遅くてごめん。好きだよ……」



ぎゅっとあたしを抱きしめる。