「もう、誠吾(せいご)。先に出てこないでよ」


「はは、紫(ゆかり)まだ言ってなかったんだ?」



お互いを下の名前で呼び合うふたり。




「あ……あの」


「あ、ごめんなさいね!結城さん!部屋を用意できたのがこの子の部屋しかなくて」



慌てたようにあたしに説明する。



「え?この人男の子じゃあ……」



あたしは、女の子の友達が新しくできるかと思ったのに。



「は?俺が女に見えるのか?」


「ばか、そういう意味じゃないでしょ!」



持っていたファイルで彼の頭を叩く。

ここに入ってから知り合ったにしては、やたら仲がいいような気がするのは気のせいだろうか。



「つーわけではやく入れよ」



あたしの腕を引っ張って部屋の中へと無理やり連れていく。



「え!ちょ!」



慌てて、腕を振りほどこうとするも男の子の力には適わない。



「いいから、紫に迷惑かけんなよ」



あたしをキッと睨むと、東野さんににっこり手を振って部屋のドアを閉める。