失恋覚悟のマイヒーロー

「何やってんだよ、そんなとこで」



息を切らして、あたしの前にいる更科くん。



「……ど、して」



さっきは、あたしのこと拒絶したくせに。
なんで息切らしてこんなとこにいるの。



「……んなとこいて、またアイツきたらどーすんだよ。他のやつだって多分狙ってるし」


「いいじゃん、そしたらついて行けば。観光したいもん」


「お前……何いってんだよ」



もう、どうだってよかった。
どうせ、更科くんとは行けないんだから。



「観光行くか?」



何を思ったか突然そんな事を言い出す更科くん。



「へ?」


「行くぞ。海鮮でも食べるか?」


「う、うん!」



さっきまで落ち込んでいた気持ちなんて、更科くんの言葉ひとつで膨らむ。

恋ってすごい。
好きな人のことだけて、こんなに一喜一憂できるんだから。



「さっきは悪かったな」


「え?」


「無神経だった」



きちんと頭を下げて謝るこの人をみて、どうでもよくなった。
こうしてきちんと考えてくれるから。

好きな気持ちは変わらないけど、最後の日まで楽しもうと思えた。