失恋覚悟のマイヒーロー

「いや、お前言わないんじゃなかったのかよ」



驚いたようにあたしに聞いてくる。



「うん。冗談ではね」


「は?」


「本気で好きだよ。更科くんのこと」


「……はっ」



あたしの言葉にどんどん気まずそうな顔になっていく。



「あたしが言いたいだけだから、そんな顔しないでよ」



気まずそうな顔なんてして欲しくなくて、彼の頬に触れようと手を伸ばす。



「悪ぃ」



そんなあたしの手を彼の手が遮った。



──拒絶。
あたしの頭の中にはその二文字しかなかった。



「はは、そうだよね……ごめん、頭冷やしてくる」


「は?」


「ごめんね、気まずくさせて」



彼にそう言い残して、扉を開ける。



「おい!」



更科くんの声が聞こえたけど、振り向かなかった。

もう、泣いてしまいそうだったから。
そんな顔を見せたらまた、あんな顔をさせちゃう。


──言わなきゃよかった。
でも、どうしても言わずにはいられなかった。

だって、溢れちゃったんだもん。