失恋覚悟のマイヒーロー

「お前、俺のこと好き?」


「……え?」


「嘘でもいいからさ、好きって言ってくんね?」


「……っ」



嘘なんかじゃないから。
あたしは、好きなのに。



「いま俺傷心だからさ、誰かに好きって言われるだけで救われる気がするんだよね。ウソでも」


「……言えない」



そのまま立ち上がって、自分の部屋へ行こうとする。



「おい、いいじゃんその二文字くらい言ってくれても」


「そんなの軽々しく言う言葉じゃないって、更科くんが1番わかってるんじゃないの?」


「……っ」



彼は長いこと1人の人を思ってきた人だ。
彼女が困ってたら手を差し伸べる。
でも、気持ちなんて伝えようとはしない。

冗談でなんかいくらでも言える。
でも、更科くんにだけは冗談でなんかいえない。



「……ごめん」



部屋の中に気まずい空気が流れる。



「好きだよ」



気がついたら言っていた言葉。

でも、これは冗談なんかじゃない。