星歌〜届かないほど遠くにいる君に〜





へいちゃんが入るとみんながザワザワし出した。



「おー…今日は黒狼全員来てんじゃん…なに?やる気になった?」


そんなことを聞いてへいちゃんがニヤニヤしているのが頭に浮かぶ。



というかさっきから女の子の声が聞こえないのは気のせいかしら?


「っと、それはおいといて、今日は転入生がいるぞ。


入ってこーい」



は!


へいちゃんの声にはっと我に返る。
はやく行かなきゃ…



私は教室に足を踏み入れた。



入ると教卓に手をつくへいちゃんの横に並ぶ。



「んーじゃあ那珠、自己紹介しろ」

あら、生徒を呼び捨てしていいのかしら?

まあいいわ。

私は前を向き直してゆっくりと口を開く。

「槻宮 那珠です。よろしく?お願いします…」

思わず疑問形になってしまった。


あ…れ?

よく見ると女の子が一人もいない…?


横を見るとへいちゃんは申し訳なさそうに苦笑いしていた。


ーーーーと次の瞬間…

「わぁぁぁ!!!女だぁっ!」


「来たっ!来たっ!男子校に春が来たァァァ!!!」


教室中に巻き起こる歓声。



ま、待って…なに?男子校って…聞いてないのだけど…。

「へいちゃん?」

「ごめん、那珠。恨むなら澪を恨んでくれえぇ」

うなだれるへいちゃんをみると、すこーし申し訳ない気がして、澪を恨むことにした。



やってくれたわね、澪…!!!


「で、那珠の席はあっちだ。」

私はへいちゃんの指が向いてる方に視線を向ける。

よしっ!窓際の一番後ろ!



私はスキップ気味に机に向かって一直線に歩いた。