大人になるのが怖いと思った。
"大人になるとね、キスしてもセックスしても、恋人になれるとは限らないのよ。"確か何かの小説のワンフレーズ。
ファーストキスは好きな人と。初めては結婚してから、大好きな人と。中学生の私は、大人はなんて汚いんだって、私は素敵な大人の女になるんだって、そう決めた。
キスしたってセックスしたって、恋人になれるとは限らない。その通りだとハタチを過ぎて実感した。私は、汚い大人になってしまったんだ。


「ちょっと…」
「何?」
「何しようとしてるわけ」
「しても何も変わらなくね?」

男友達。と言っても実は元彼なんだが、彼の家に泊まりに来たら押し倒されて迫られるキス。1度は持った関係だが、私をフッたのはコイツから。やっぱり私が好きなのか、それとも元カノなんて、いつでもヤれるただの都合のいい存在なのか。まあどちらにしても私はもうコイツに気はない。全く。安い女に思われたくない。だからこんな事しちゃいけない。分かっているけど、根がクズなもので。

「…私、好きな人がいるの」
「好きな人いるのに元彼の家来るの?」
「でも付き合ってないし」
「ふうん」

好きな人。彼ともキスしてる。勿論、それ以上も。でもどちらからとも好きなんて言わない。両想いだって分かってる。でも多分、お互い都合のいい関係でいたいだけなのかも知れない。恋人っていう関係に縛られて、お互いの言葉一つ一つに敏感になって、楽しい事なんてなくなって、他人に戻る関係なんて。だったら多分お互い好きなんだろうって曖昧な気持ちで、付き合ってないのにこんなコト、なんて気持ちいい事してる方が楽しい。
それに、誰と何したって浮気だなんて責められない。縛れないし、縛られない。愛されて、ない。

「…私はクズよ。相手も私の事好きだって分かるのに、いつか終わるのが怖いって、気持ち言えなくて、でも愛されたい、寂しいからって理由で男の家来て、こんな事してる」
「そんなん言ったら俺もクズだよ。お前はされるがままになってればいいじゃん。俺が何しても応えないで、そうすれば俺の一方的な行為でしょ?」
「…そうね」
「なんならちょっと抵抗すれば」


ピーターパン迎えに来てよ。


手を繋ぐだけでもドキドキした、あの頃に戻して。