今から半年ちょっと前。高校2年生の終わりごろ。


お父さんの海外転勤が決まった。


お母さんはわたしと中学生の弟を連れて、お父さんについていくと言った。



『わたしは行きたくない! ここに残る!』


『よねこ。気持ちは分かるけど……まだ高校生でしょ? 1人暮らしなんて危険すぎるわよ』


『だって、英語わかんないし、進路も難しくなるし』


『じゃあ北海道のおばーちゃんのところに……』


『嫌だよ! そしたらなおくんと離れ離れになっちゃう!』



困った顔をするお父さんとお母さん。


泣きながら現実に抵抗するわたし。



なおくんとはその時、付き合って1年くらいだった。



当時、高校3年生だった彼は、地元での就職が決まっていた。


制服デートはできなくなっちゃうけど、来年も変わらずなおくんの近くにいれるはずだった。



なのに……どうして?



泣きながら、なおくんに相談すると。



『じゃあ、俺と一緒に住まない?』


『え……?』


『俺、4月から1人暮らしするから』


『…………』


『よねこ。一緒に暮らそう』



真剣な顔で、彼はそう言ってくれた。



物件探しにはわたしも連れて行ってくれた。


いい部屋なんだけど高いよなー。ここスーパー近いしいいんじゃない。



そんな何気ない会話の合間。わたしが、



『なんか新婚さんみたいだね』



と伝えると、なおくんは照れた顔で手を強くつないでくれた。


わたしも同じくらいの力でぎゅっと握り返した。