良かった。いいタイミングで帰ってきてくれた。



「おかえりー!」



エプロンで手を拭いてから、その音の方向へ走った。


笑顔にさせることができるよう、テンション高くなおくんを迎え入れた。



なのに……。



「あー。ただいま」


「ご飯、もうできるよ!」


「んーちょっと横になってからでいい?」



ため息をつきながら、なおくんはわたしの横を通り過ぎていった。


ネクタイをゆるめ、ぼふっとベッドに倒れ込んだ。



「具合、悪いの?」


「別に。今日外回りだったから疲れただけ」


「スーツ、しわになっちゃうよ」


「ん」


「ご飯、冷めちゃうよ」


「先食べてていいよ」


「でも……」


「後でレンジであっためるから。ごめん、少し休ませて」



なおくんはわたしを視界に入れないまま、目を閉じた。



次第に、すーすーと寝息が聞こえてくる。


今寝たら夜寝れなくなって明日また疲れちゃうのに。



1回、こういう時に無理やり起こしたことがある。


その時はめちゃくちゃ機嫌が悪くなったから、もうしないでおこうと思った。



なおくんの分のおかずにラップをかける。切ない気持ちも一緒に閉じ込める。



テレビの音量を小さくしてから、わたしは1人あまり美味しくない夜ご飯をとった。