喉の奥がかーっと熱くなる。
必死になって押し込めていた気持ち。そこへと続く導火線に火が着く。
気がつくと、たまっていたものを爆発させてしまっていた。
「でもわたしだって不満はあるよ! 何回言ってもトイレのフタ閉めないし、靴そろえないし、洗濯物も裏返しのままだし、結構大変なんだよ?」
「よねこが卒業したら家事に専念できるし、時間できるでしょ? もう少しの辛抱だって」
「なにその言い方! 少しは直す努力してよ! しかも人のことヒマ人みたいに言わないで!」
「実際、そうじゃん」
「じゃあ早く、子ども、作ろう?」
「まだそんな余裕ないんだけど」
「本当はもっと旅行もデートもしたい! 欲しい家具や家電だっていっぱいあるのに!」
「何。俺の稼ぎが少ないって言いたいの?」
「そうじゃなくて。わたしはいつもなおくんを一番に優先してるよ? だから、なおくんもわたしのこと……」
ここまで言いかけた時、なおくんの目に光がないことに気がついた。
まるで、可愛そうなものを見ているかのよう。
わたしだけが感情的になっている。ああ、バカみたいだ。
「もういい!」
着けたままだったエプロンを彼に投げつけ、わたしは家を出た。