なんとなくミシマに頼り切るのは嫌だったため、


廊下に面した水洗い場で、2人でごしごしとぞうきんを洗った。



「指輪、今日はしてないんだ」


「うん。だって作業してたら汚れるし」


「朝からしてなかったじゃん」


「ちょっ、何見てんの!」



ミシマに言われると、ちょっと恥ずかしくなってしまう。


こいつとはずっと相棒みたいな関係だったし、割とかっこいいのに女っ気全然ないし。



鏡越しに、前よりも少し前髪が伸びたミシマを見ていると。


ちらっと彼もわたしと目を合わせた。



「絵、やっぱ上手いよね」


「ん? タコのこと? リアルすぎってドン引きされたけど」


「勝手に早く引退されたけど、腕落ちてないじゃん」



赤や青や黒が混ざった水が、排水溝へと流れていく。


拭く前の姿にぞうきんを戻したかったけど、染みた色を落としきることはできなかった。



「……あ、さすがにそろそろ帰んなきゃ。ありがとねミシマ」



彼の声を聞かなかったことにして、わたしはキュッ、と蛇口を閉めた。