なおくんのお嫁さんになるわたしは、進学も就職もしないから、高校の課題以上の勉強はしなくていい。


掃除は昨日したから大丈夫だし、かわいた洗濯物もたたんでクローゼットに入れた。


ぼけっとテレビを眺めながら、ひたすら帰りを待つ。


お腹の音が落ち着いた頃、ようやくガチャ、と玄関ドアが開いた。


わたしは反射的に立ち上がり、その音の方向へ走った。



「なおくん、おかえり!」


「ただいま」


「遅かったね。仕事、大変?」


「先輩と飯食ってた」


「……え」


「あ。よねこに連絡するの忘れてた。ごめん」


「…………」



一言だけでも、メッセージをくれたらよかったのに。


出来たてのおでん、なおくんに食べてもらいたかったのに。



「ううんううん。作ったのおでんだし、日持ちするから大丈夫」



口ではそう言いつつも、感情が顔に出ているかもしれない。


大好きな人なのに、目を見ることができない。



「本当ごめん。明日は早く帰るようにする」



申し訳なさそうにそう言ったなおくんは、優しくわたしの頭を撫でてくれた。



これだけじゃ、足りないよ。寂しいよ。


久しぶりに夜はぎゅっと抱きしめてもらいたいよ。