左手の指輪を天井の明かりにかざす。


中心で光るダイヤモンドは吸い込まれそうになるほどに美しい。


安物でゴメン、と言われたけど、そんなの関係なく嬉しかったし、凛とした雰囲気のデザインもとても好き。


家事やお風呂の時以外はいつもつけていたいけど、ミシマの言う通り汚れそうだし、色塗りをするときは外した方がいっか。



昆布のだし汁と醤油の香りが部屋まで広がっている。


今日の夜ご飯は、お母さんに教えてもらった自慢のおでん。


長い時間煮込んだし、味もちゃんと染み込んでいるはず。



――あれ。なおくん、遅いな。



携帯を見ると夜8時半。メッセージはない。


おかしい。残業や飲み会の時には連絡が来るはず。



「……はぁ」



最近、なおくん帰ってくる時間がまばらすぎるんだよな。


ご飯ができるタイミング、ぴったり合わせるの結構大変なのに。



ぐつぐつと大根や卵が煮込まれていく音が、わたしの心の隙間を広げていく。


仕事ってそんなに大変なのかな。携帯いじる暇もないのかな。それともわたしに連絡をするのがめんどうなのかな。わたしよりも仕事が大事なのかな。



……そんなこと考えちゃだめだ。


なおくん頑張っているんだし、帰ってきたら笑って迎えてあげなきゃ。



でも、おなかすいた。ヒマだ。